2006年09月17日

死ぬ前に食べたいひと皿

先日、食いしん坊な友人と晩ゴハンを頬ばりながら
「最期の晩餐を食べるなら、どこの料理屋か???」
という、じつにベタな話題となった。

ラスト1週間を根性でレストラン巡りに当てるとして「お鮨」「天ぷら」「イタリアン」「フレンチ」「チャイニーズ」「割烹」「ステーキ」と、まあ、バランス良く7つのジャンルに絞ってみると、あそこかなあ、ここかなあ……。
と、そんな具合に真剣に考え込んでいたのだけれど、そこで友がポソッとひと言。

「きっと、そういう状況だと、おいしいかどうかはあんまり問題にならないと思うんだよネ」

それを聞いて、あるテレビ番組で相当ご高齢な男性ふたり組が、街頭インタビューを受けていたのを思い出した。たしか、
「死ぬ前に食べたいモノはナンですか?」
という、かなりリアルでシュールな質問だったと記憶する。
すると、オヂイチャンたちは声をそろえて無邪気に答えた。

「お子様ランチッ!!!」

なるほどネエ……。
最後の最後にいきつくのは、オトナになってから「美味」と発見した味ではなく、子供のころにドキドキワクワクしながらかっ込んだ、思い出の味ってことになるのかも知れません。

病床の父も、なんだか近ごろずいぶんと幼少時代を懐かしむようになった。
このあいだ、病室のなかばかりでは気が滅入るだろうと、そろそろ暑さも過ぎたので、車椅子でちょっとした遠出を企画したところ「むかし遊んだ有栖川公園に行きたい!」と、いうのである。
父は日赤に入院しているので、広尾の有栖川公園は目と鼻の先。
介護タクシーを呼べば、ものの5分でついてしまう。
「そんな近くでいいの?」
と少々もったいない気がしたものの、とにかく行ってみることにした。

「そこの池でザリガニ捕りをしたんだヨ」
とか、
「ここで学校(←麻布中学)のチャイムが聞こえると、毎朝猛烈にダッシュして、なんとか時間に間にあったんだ」
とか、父がキラキラして話すのを聞きながら、ヘルパーさんたちに手伝ってもらい、公園内のメモリアル・スポットをあちこちと辿っていく。
青空からはまだ蝉時雨が降っていたけれど、木立を吹き抜ける風は秋の気配。
「こんなに高くなかったんだけどナア。ずいぶんと大きく育ったもんだ」
と、車椅子から木々を見上げる姿を見て、この場所に父がどれだけ愛着があるか、なんとなく伝わってくるようだった。

絶対に叶わないことだけれど、少年だった父に会えたらいいのに、なんて思ったりもして。

なにはともあれ、かけがえのない子供時代を送ることって、誰にとっても「とてつもなく大切」なんだろうナア、と感じている今日このごろです。

Posted by chidamaki at 22:24 │Comments(0)この記事をクリップ!